GINGA MAGAZINE

◆早池峰山の麓で

EFRICA中嶋です。マガジン3回目の投稿はEFRICAスパイス完成までのストーリーをお話いたします。EFRICA第一弾のプロダクトリストには鉄製品や木工、革、染物と並んでスパイスが挙げられました。私が自分なりに研究して調合したものをキャンプで仲間に振舞っていたこともあり、一から自らの手で作れる製品であったことが大きな要因です。今までは自分が使い切る量を計量カップとボウルで調合していたのですが、製品化となるとしっかりとした工場が必要になります。やるならもちろん岩手の工場で。すぐに頭に浮かんだのが大迫町の早池峰自然科学興業さんでした。同社は七味にんにくなどのオリジナルスパイス、薬味が有名で岩手県内の道の駅などで製品をよく目にします。すぐに相談のアポを取り、数日後工場へ伺いました。何処の馬の骨ともわからない我々を、社長さんと担当の社員さんには温かく迎えていただきました。手元にあったスパイスを工場に持ち込み熱意を持ちながらプレゼンしたのを憶えております。工場協力のもと方向性を定めたうえで開発はスタート。初回サンプルは１か月ほどで完成しました。

レシピがはっきりしていたこともあり、最初から納得のいく出来映えではありましたが、“おいしい”からさらに“すごくおいしい”を目指したい。さらなる試行錯誤の旅が始まりました。新たにセレクトしたスパイス、ハーブを混ぜ、２回、３回とサンプルがあがってくるたびに暗号のように配分をナンバリングし、前回のものと比較しながらテイスティングしていくので、舌をリセットする、そして味を記憶することが困難になってきて進んだり戻ったり。舌の記憶との勝負でした。特にも塩味の強弱、バランスが難しく分量、配合を変え味見を繰り返しました。

そんな紆余曲折があり、もはや好みのレベル？という段階まで来た時、最後は“神の舌を持つ社長”（←勝手に命名）に配分の微調整をしていただきました。社長さんは神の舌だけではなく、“クセがすごい”骨董品（武将の首桶、春画…その他いろいろ）を多く所有しており界隈では有名なコレクター。いわゆる違いの分かる男なのです。最終サンプルの出来に大きくうなずき、これならいけるとゴーサインを出しました。

◆マウンテンスパイス誕生

こうして生まれた自慢の３本。その名もEFRICAマウンテンスパイス。初回サンプルをもらった帰り道、ふと浮かんだのが“マウンテンスパイス”というワードでした。毎回ミーティングへは私の住む宮古市から早池峰山の登山道入口を通り、山間部を抜けて向かったのですが、その道中で見た山々、神々しい早池峰山が頭の中に強くあったのだと思います。インスピレーション、モノづくりの世界観はこういったところからも生まれるものです。（のちに雲間から見えた早池峰山はスパイスのジャケットのデザインの元になりました。）

EFRICAマウンテンスパイス。01からナンバリングされた３本にはそれぞれにサブネームがあります。

01 SALT＆PEPEER＋ ソルトアンドペッパープラス

02 TASTY SALT テイスティソルト

03 FRIDE CHIPS フライドチップス

それでは1本ずつ説明を。

01 SALT＆PEPEER＋

ソルトアンドペッパープラスは塩コショウに唐辛子の辛みとハーブの香りをプラスしてあり、肉、魚、野菜、料理を選ばずオールマイティに使える1本。普段、塩コショウを使うシーンで振りかけてほしいスパイスです。お肉の下味としてもバッチリ。個人的には特に鶏肉との相性が良いと思っています。グリルした鶏肉に振りかけるだけでオッケー。鶏の味を引き立てつつスパイスも個性を主張します。またオリーブオイルにも抜群に合うので、カプレーゼやアヒージョなどにも試してもらいたいです。最初から土台となる個人的な黄金比レシピがあったので３本の中では開発が一番スムーズに進んだスパイスです。

02 TASTY SALT

テイスティソルトは塩をベースに塩味と旨味がそれぞれに引きたつように仕上げました。肉、魚の焼き物だけでなく、から揚げ、てんぷら、フライドポテトなどの揚げ物にもあう、名前通りのおいしい塩です。アヒージョなどのオリーブオイル系、ポトフなどのコンソメ系スープの味の調整にもオススメです。掌にのせてペロっと舐めてみると塩気のあとに旨味がぐっと追いかけてくるので、クセになり何度もペロペロしてしまうほどです。しかしながらこのスパイスには苦労しました。おいしい塩をうたいたい気持ちとは裏腹に、ブレンドの段階で塩味が強くでてしまう傾向があって、塩の種類と量を変えながら、受け止める内容物も調整して塩味と旨味のバランスを取りました。舌の上にのせて溶かしながらこの記事を書いていますが、やっぱりおいしいです（笑）

03 FRIDE CHIPS

唐辛子とオニオンが効いたふりかけチップスです。この03番は早池峰自然科学興業さんからの提案がありコマを進めたスパイスです。もともと乾麺用のあとのせふりかけとして社長が開発していたものを味見させてもらい、EFRICAバージョンに配合を変えて商品化に至りました。01、02に混ぜることで辛みと風味をプラスします。火を加えるとさらに香ばしくなりますのでお肉にまぶして焼くのもおすすめです。振り掛けるもよし、油で焦がすもよし。そのまま食べるとカリっとしてビールに合うおつまみみたいな味がする変わり種です。

◆多くのアウトドアファンに届けたい

３本ともにそれぞれ個性的な味に仕上がりました。食欲の増進を目的とする香辛料も嗜好品と呼ばれることがあります。嗜好、特にも味覚の分野ですので製品の特性上、ゴールの見極めが大変むずかしく、自分ひとりでは今回の形で完成させることはできませんでした。プロの知識とノウハウが多く詰め込まれています。早池峰自然科学興業さんにお伺いして、完成するまでの道のりを考えると感慨深く、製品を手にし、我が子のように愛おしく思います。早池峰山にいだかれた工場で岩手の人々の手から生まれた自慢のマウンテンスパイス。ボトリングも気持ちを込めて行っています。キャンプはもちろん、ご家庭でもぜひ使っていただきたいです。ようやく皆様のところにお届けできます。いろいろな料理にふりかけてください。